阪神の育成左腕・伊藤稜投手に、また大きな試練です。
9月11日付の報道では、伊藤投手が左肩関節のクリーニング術と腱板修復術を受けたと報じられました。
2026年は育成5年目。
春季キャンプでは一軍主力が集まる宜野座組に抜てきされ、いよいよ支配下登録が見えてくるか――と思われたシーズンでした。
だからこそ、今回のニュースを見て、
「伊藤稜ってどんな投手?」
「なぜ育成で5年目まで阪神が契約しているの?」
と思った虎党もいるのではないでしょうか。
実は伊藤投手、ここまでのプロ生活そのものが左肩との戦いでした。
それでも2025年にはファームで約100イニングを投げ、防御率2点台。ようやく本来の能力を数字で証明し始めていた左腕です。
今回は手術そのものを医学的に深掘りするのではなく、伊藤稜という投手がどんな道を歩み、なぜ阪神がこれまでチャンスを与え続けてきたのかを振り返ります。
※手術内容は報道に基づくものです。公表されている術式名だけから損傷の程度や具体的な復帰時期を判断することはできません。
阪神・伊藤稜とは?中京大から育成ドラフト1位で入団
まずプロフィールを整理します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名前 | 伊藤 稜(いとう・りょう) |
| 生年月日 | 1999年11月8日 |
| 出身 | 愛知県 |
| 身長・体重 | 178cm・88kg |
| 投打 | 左投左打 |
| 経歴 | 中京大中京高-中京大 |
| ドラフト | 2021年育成ドラフト1位 |
| 背番号 | 125 |
| NPB年数 | 5年 |
2026年でプロ5年目。現在も背番号125の育成選手として登録されています。
中京大中京高では3年夏に甲子園を経験。その後、中京大へ進学し、2021年育成ドラフト1位で阪神から指名されました。
当時、球団が紹介した特徴はかなり魅力的です。
最速150kmを誇る左の速球派。
さらに、テイクバックが小さく、打者からは球速表示以上に速く感じるストレートとスライダーが武器と評価されていました。
本人も入団発表では、自身のセールスポイントとして「力のあるストレート」と「負けん気の強さ」を挙げています。
左から150km。
それだけでも育成1位で指名された理由が分かりますね。
プロ入り直後から続いた左肩との戦い
ただ、プロ入り後は思うように投げられませんでした。
左肩痛の影響で、2022年、2023年はファーム公式戦でも登板なし。
2022年12月には左肩の手術を受け、長いリハビリ生活に入りました。
報道によれば、大腿筋膜張筋を左肩へ移植する手術を受け、自ら執刀医を探したとも伝えられています。投げられない時期には、1年間でランニングシューズを5足履きつぶすほど走り込んだといいます。
かなり印象的なエピソードです。
ただ「肩が治るのを待つ」のではなく、
もう一度投げるために、自分が今できることを積み上げ続けた。
高橋遥人投手や小川一平投手らとリハビリ期間を過ごし、本人も後に、トレーナーや一緒にリハビリした仲間への感謝を語っています。
ようやく公式戦のマウンドへ立ったのはプロ3年目の2024年。
この年はウエスタン・リーグで7試合に登板し、0勝1敗、4回、防御率20.25でした。
数字だけを見れば厳しい。
でも伊藤投手にとっては、プロ入り後初めて「試合で投げられた」シーズンでした。
そして翌2025年、その積み重ねが一気に結果へつながります。
2025年、ついに才能が数字になった
2025年の伊藤稜は別人のような成績を残しました。
| 2025年ウエスタン | 成績 |
|---|---|
| 登板 | 23試合 |
| 勝敗 | 8勝7敗 |
| 投球回 | 99回1/3 |
| 防御率 | 2.63 |
| 奪三振 | 68 |
| 被本塁打 | 3 |
NPB公式記録では、23試合で99回1/3を投げ、8勝7敗、防御率2.63。
特に注目したいのが99回1/3です。
2024年はわずか4イニング。
そこから翌年、一気に約100イニングを投げました。
しかも99回1/3はウエスタン・リーグ4位。8勝もリーグ3位タイでした。
9月にはさらに調子を上げます。
4試合で3勝0敗、14回1/3を投げて防御率0.00。
この活躍で阪神球団選定のファーム9月度月間最優秀選手にも選ばれました。
2年間ほとんど投げられなかった投手が、約100イニングを投げるところまで戻ってきた。
個人的には、防御率2.63以上にこの「99回1/3」という数字に、伊藤稜の復活への執念を感じました。
なぜ阪神は育成5年目まで伊藤稜を待っているのか?
ここで気になるのが、
「なぜ阪神はここまで長く伊藤稜にチャンスを与えているのか?」
というところです。
正確には「5年間の長期契約」を結んでいるわけではありません。
伊藤投手は育成3年目を終えた2024年10月31日に、規定により一度自由契約選手としてNPBから公示されています。
それでも阪神は再契約を選び、2025年、さらに2026年も育成選手として登録しました。
これは少なくとも、球団が伊藤稜の持っている能力と将来性を見続けてきたことがうかがえる動きです。
実際、アマチュア時代から伊藤を見ていた和田豊氏は、過去の取材で球の強さや持っている能力の高さを評価していたことを明かしています。
そして2025年春の紅白戦では、テレビ中継表示で最速154kmを計測。
藤川監督からも、その後のオープン戦帯同の可能性に言及されるほどのアピールを見せました。
「肩さえ万全なら見てみたい」
球団がそう考え続けてきたとしても、不思議ではありません。
そして2025年には、ついにファームで結果も残した。
だからこそ2026年は、本当に支配下が狙えるシーズンだと思われていました。
2026年は初の宜野座スタート|支配下が見えた矢先の試練
2026年春季キャンプ。
伊藤稜の名前は、具志川組ではなく宜野座組にありました。
才木浩人、村上頌樹、及川雅貴、工藤泰成、木下里都ら一軍戦力候補と同じグループです。
育成5年目にして初の宜野座スタート。
球団が支配下候補の一人として見ていたことを感じさせる選出でした。
春季教育リーグでも、3月7日のソフトバンク戦で3回無失点、3月12日のオリックス戦では1回を三者凡退。ところが、その後は2026年のファーム公式戦で登板記録がありません。
そして今回、再び左肩に手術を受けたとの報道が出ました。
正直、
「ようやくここまで来たのに……」
という気持ちはあります。
2025年に約100イニングを投げ、2026年は宜野座スタート。
支配下というゴールが、これまでで最も近くに見えていたからです。
復帰時期は決めつけず、もう一度マウンドを待ちたい
今回報じられたのは左肩関節のクリーニング術と腱板修復術です。
ただし、「腱板修復術」という手術名だけで、どの部分がどの程度損傷していたのか、伊藤投手がいつ投球を再開できるのかを外部から判断することはできません。
一般的に腱板は肩を動かし、安定させるために重要な組織ですが、今回は医学記事ではないのでここでは深掘りしません。
今後、「投手の肩の故障」「腱板とは何か」「MRIでは何を見るのか」といった内容は、トラ技師の医療解説で詳しく取り上げたいと思います。
今はただ、本人と球団が決めたリハビリのステップを一つずつ進められることを願いたいです。
まとめ|まだ伊藤稜の150kmを一軍で見ていない
2021年育成ドラフト1位。
プロ入り後2年間は公式戦で投げられず、左肩の手術と長いリハビリを経験しました。
それでも諦めず、
2024年に実戦復帰。
2025年には23試合、99回1/3、防御率2.63、8勝。
そして2026年は、ついに宜野座キャンプスタートまでたどり着きました。
育成5年目までチャンスを与えられているのは当たり前のことではありません。
もちろん「長く契約しているから必ず支配下になる」とは言えない。
それでも、再契約し、宜野座へ呼び、何度もチャンスを与えてきた事実からは、阪神が伊藤稜の左腕に可能性を感じ続けてきたことが伝わってきます。
そして何より――。
僕たちはまだ、伊藤稜の力強いストレートを一軍のマウンドで1球も見ていません。
だから、このまま終わってほしくない。
何度も左肩の壁を越えてきた育成左腕が、今度こそ背番号2桁をつけ、甲子園のマウンドへ上がる日を待ちたいと思います。
頑張れ、伊藤稜!
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